【書評】And so this is Xmas/秦建日子
今回は読み始めた頃がクリスマスシーズンだったので、
「アンフェア」やそして「そして誰もいなくなった」の脚本家などで知られる、
秦建日子さんの新作And so this is Xmasを読みました。
地味にサイン入りです。
あらすじ
クリスマスを目前とした東京を舞台に恵比寿、渋谷と連続爆破テロが巻き起こる。
犯人の要求は総理大臣との対談。
犯人は誰なのか、犯行の動機はなんなのか、そして繰り返し犯人から告げられる
「これは戦争です」
という言葉の意味とは…
書評
この作品は様々な人物が登場します。
事件を追う刑事の視点、犯人に脅迫され言われるがままに行動する青年の視点、事件を調べる謎の天才プログラマーの視点、テロに遭遇してしまう人々の視点、と様々な登場人物の目線で作品は進行してゆきます。
それゆえに、時間の流れに沿って進まなかったり、どの人物の話なのかわかりにくくなったりしますが、読み終えるとそのわかりにくさが犯人の正体をわからなくするための構成何じゃないかと。思いました。
連絡の手段がLINEだったりテロが起きてもテレ東は通常放送していたり、爆弾が仕掛けられたと報道しているのに現場に群がる人や野次馬Youtuberが現れたりと、平和ボケしている日本のクリスマスにテロが起きたらこんな感じになるのだろうなと思いました。
読みながら自分でも犯人を推理し、犯人がわかったときにはわりと納得の行く展開で、
物語は終了します。ですが、エピローグで全く考えてもいなかった事件の本当の真相が明らかになる大どんでん返しがあります。
この本の販売と同時に舞台を上映しているだけあって、
展開にハラハラさせられる2時間ドラマのようなテンポのいい作品でした。
読み終えた頃にはクリスマスは終わっていて気づけば大晦日でした。
作中ラストの方である人物からの手紙で
「では、ちょっと遅いけどメリークリスマス。
そしてハッピーニューイヤー」
という一文がクリスマスが過ぎた今の自分に宛てて送られているような気分でした。
来年もたくさんの作品に出会えることを願います。それでは良いお年を。