本ですね。

読んだ本の書評みたいなものを自由気ままに、気楽に書いていこうと思います。

【書評】コンビニ人間/村田沙耶香

2016年上半期の芥川賞を受賞した村田沙耶香さんのコンビニ人間を読みました。
調べるまで芥川賞が上半期下半期と年に2回選考しているのを初めて知りました。

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

あらすじ

主人公は30台未婚女性、古倉恵子。
彼女は幼少から小鳥の死体を見て焼き鳥にしようと考える割りとクレイジーな言動が目立つ子どもで周囲や両親からも変わった子だと言われてきた。
そのうち彼女は何が悪いのかはわからないけれど、なにもしないことが周囲に迷惑をかけないことだと考え、自ら行動することをやめた。
そのまま大学生になった彼女が、たまたまコンビニのアルバイトの募集を見つけ、アルバイトをすることになる。
コンビニのアルバイトはマニュアル通りに働くだけで周囲からは変な人には思われなくなるという彼女が求める天職であった。
そんなコンビニのアルバイトを何年も続けていく中で周囲の人間を真似することで辛うじて常人を演じることができた古倉だったが、新しく入った男性で新人のバイト白羽と出会う。

 

書評

単純にコンビニで働く女性の話だと思っていましたが、全く違いました。
曇りない主人公が独特の感性で生きて行くその表現やセリフが面白く、
芥川賞選考会で歴代トップクラスの面白さと言わせるだけはあるなあと思いました。

 

中でも一番衝撃を受けた場面は、
度々問題行動を起こす新人のバイト白羽と主人公古倉が会話している場面での一言です。

「あの……修復されますよ?」

コンビニで問題を起こせばクビになるだろうとは思いますが、
主人公は、コンビニは完璧なものであると考えており、その完璧なものを乱すものは排除、つまり修復されてしまうと考えているのでこの表現で話しているのだと思いました。
この主人公の独特の感性からくる表現に、少し鳥肌が立ちました。

 

作中に出てくる新人のバイト白羽が度々口にする
現代社会は皮を被った縄文時代だ」というようなセリフも、
読み進めていくと確かにその通りなのかもしれないと考えさせられてしまいます。

 

また、筆者がコンビニでアルバイトをしていた経験が元になっているというだけあり、
コンビニでの描写はとても細かいところまでリアルに表現されているので、
コンビニでアルバイトを経験したことがある人は共感できる部分もあるのではないかと思います。

 

サイコパスな一面を持つ主人公ですが、少なからず共感してしまう部分も多々あり、
現代社会のあり方や、人間関係の煩わしさを上手く表現できていて面白いなあと感じました。
普通とは何なのかと考えさせられる作品でした。